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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2006. 6.  RIETI  LETTER
シニア世代にもっと光を顔画像と経歴



住友信託銀行株式会社
  会長  高橋  温

 「団塊の世代」が注目を集めている。一九 四七年から四九年までの三年間、戦後のベビ ーブーム時代に生まれたこの世代は、出生人 口が八〇六万人。二〇〇二年から〇四年の三 年間の出生人口三四〇万人と比較すると、二 倍以上の開きがあると同時に、少子化の進行 についても憂慮せざるを得ない。

 また、二〇〇七年問題としてクローズアッ プされているように、彼らのうちのサラリー マン約四〇〇万人が、二〇〇七年から順次六 〇歳に達して定年を迎える。

 一説には五〇兆円とも言われる退職金をめ ぐって「金融機関の団塊マネー争奪戦」など と報じられることもあるが、金融機関にとっ ては、団塊の世代だけでなく、彼らを含む五 〇歳以上のシニア世代が大きなマーケットで あり、団塊の世代はその象徴に過ぎない。資 金の預入れに限らず、彼らの幅広い金融ニー ズにいかに応えていくかが問われている。

RIETI LETTER 表紙画像  金融以外の産業分野においても、シニア世 代に対する期待が大きいことは想像に難くな い。しかし意外なことに、彼らの金融行動や 消費行動の実態が十分に把握されていない、 と感じることが多い。

 たとえば、金融行動における特徴としては、 一般に、経済的にゆとりがあってリスク許容 度が高い、と理解されている。つまり、株式 や投資信託、外貨預金など、比較的リスクが 大きい金融商品に対する抵抗感が少ない、と いうことになるが、私どもが関わった「団塊 の世代」に対するアンケート調査によれば、 多くの人が、安全志向が強く、堅実であるこ とが明らかになっている。

 また、彼らの旺盛な消費需要が、わが国の 経済成長を牽引する、といった期待もよく耳 にする。世代内の格差が大きいと言われるも のの、若年世代と比較すれば、年金収入があ る程度確保され、退職金収入もあるなど、全 体として経済的に恵まれているのは事実であ ろう。

 しかし、お金があるから消費してくれるだ ろうと期待するだけでは、需要は生まれてこ ない。たとえば現在、彼らが好んで支出する ジャンルは、旅行、自動車、パソコンなどで あるが、生活の基盤である衣・食・住のうち、 住宅はすでに所有している人が多いとして も、衣と食に関する支出が上位に出てこない ことが気にかかる。関心は決して低くないと 思うのだが、実際に支出が少ないのは、彼ら のニーズにマッチした商品・サービスが不足 していることの反映ではないだろうか。

 問題は衣や食だけにとどまらない。最近に なって、ようやくシニア世代向けの携帯電話 が普及し始めたものの、世の中全体が、どち らかと言えば若者の嗜好に迎合し過ぎの感が ある。シニア世代が望むもの、買いたいもの についてのマーケティングや商品開発が不十 分なために、期待感だけが先走り、現実の需 要に結びついていないような気がしてならな い。

 私自身を含めて、日本経済のために消費に 励みたいと思っているシニア世代にもっと光 をあてるべきであるし、彼ら自身、もっと声 をあげてよいと思う。



次号は岩手県知事、増田寛也氏に お願いします。
リレーエッセイ 「シニア世代にもっと光を」  (リーチレター 2006年6月号)  住友信託銀行株式会社  会長  高橋  温

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