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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2007. 11.  RIETI  LETTER
ダボス会議は暗黙知の宝庫?顔画像と経歴




NPO法人J-Win 理事長
内永  ゆか子

 今年3月、私は日本アイ・ビー・エム鰍 定年になり、専務執行役員から技術顧問と いう身軽な身分になった。代わって、最も 力を注いでいるのが、NPO法人J-Win (ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ ネットワーク)の仕事だ。今はこの新しい 組織の立ち上げと活動のベース作りに相変 わらず忙しい日々を送っている。

 NPO法人J-Winは、企業における ダイバーシティ・マネジメントの推進、と りわけ女性の活用を支援し、女性幹部の育 成を目的とする団体だが、そもそものきっ かけはIBMでの経験である。

 私が入社以来、IBMでは、「女性活用」 の波が何度か訪れてはいたが、本気で取り組 むようになったのは、1993年にガース ナー氏がCEOに就任してからである。ガー スナー氏は「ダイバーシティ」を最も重要な 経営戦略の一つと位置づけ、とくに世界共 通の課題である「女性の活用」に関しては、 170カ国のIBMに対して、現状を分析し、 改善計画を立てることを要求した。

 当時私はすでに役員入りをしていたが、 それでも日本IBMの女性活用度は170 カ国中、何と最下位。98年には、私がリー ダーとなって社内にウィメンズカウンシル が発足し、女性たちの離職原因を分析する とともに、女性が働きつづけられるための 環境作りや女性幹部の登用に向けての施策 を次々と展開していった。

RIETI LETTER 表紙画像  その結果、2003年には、均等推進企業 として厚生労働大臣最優秀賞を受賞すること ができ、各社からの講演や執筆依頼が多くなっ た。そこで、女性活用の波を他企業にも広げ たいと、日本IBMが音頭をとって、50社 の女性幹部(候補を含む)によるネットワー キング組織、J-Winが発足したのである。

 2年間の活動でめざましい成果を上げ た。しかし、女性メンバーたちからは「私 たちが頑張るだけでは限界がある。会社自 身がダイバーシティ・マネジメントを推進 しようという姿勢がなければ、孤軍奮闘に 終わる」という声が沸きあがり、さらなる 発展のために、中立的な立場のNPO法人 化をめざすことになる。

 そしてこの4月、NPO法人J-Win 誕生し、日本を代表する企業82社の賛 同のもと、女性メンバーも235名という 大きな組織となった。会員企業の会費を中 心に財政基盤も整った。しかし、アメリカ の同様の組織「カタリスト」に比較すれば、 まだまだ第一歩を踏み出したに過ぎない。 「せっかく気楽な身分になれたのに、また やっかいな仕事を引き受けて……」と親し い友人たちは口を揃える。だが、私の心に は「ギブ・バック」という思いが強い。い ろいろな人に育ててもらったおかげで今日 の私があるのだから、それをお返ししなく てはという「お返し」のこころだ。

 ボランタリーというほどおおげさなもの でなく、もらったものを、次の世代へ渡し てゆく。アメリカ人はよく「ギブ・バック」 という言葉を使うが、この精神が日本にも もっともっと浸透したらよいのに・・・・と。

 失敗も多かった私の体験を織り交ぜながら キャリアアップについて語るなど、後に続く 女性たちへ、熱いエールを送る日々である。



次号は、ボストンコンサルティンググループパートナー 秋池玲子氏にお願いします。
リレーエッセイ 「「ギブ・バック」のこころを」  (リーチレター 2007年11月号)  NPO法人J-Win 理事長  内永  ゆか子

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