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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2010. 10.  RIETI  LETTER
中小企業の存続と発展の方法とは顔画像と経歴




株式会社日本M&Aセンター
代表取締役会長  分林 保弘

 20年前、全国の税理士・公認会計士の方々から、中小企業の「後継者がいない企業」が増えているのでどうしたら良いのだろうか、という相談が多く寄せられた。

 当時の人口の出生率は1.4人。息子がいない企業が30%。いても家業を継ぐのは半分とすると、将来的には中小企業の三社に二社が後継者のいない企業になるという確信を得た。これらを解決する方法として1991年4月、当社と全国に大手の会計事務所を母体とする地域M&Aセンター会社50社を同時に設立した。

 翌年3月に日本経済新聞に全面広告であなたの会社の後継社をお探ししますという広告を掲載したところ、一週間に400件の問合せがあった。

 中小企業の事業承継の方法は当時三つ。
一、上場して資本と経営を分離すること
二、親族(主に息子)に継がせること
三、役員、社員に継がせること

RIETI LETTER 表紙画像

 ところが一の上場は全国200万社といわれる中小企業のうち、年間数十社。二は先ほどの人口出生率の低下で息子がいないか、家業を継ぎたくない息子の増加で、これも難しい。三の役員、社員に継がせたらと思う人は多いと思うが、よく考えてみると、資本金一千万の会社が30年も経つと資産も増え、株価も数億の価値になる会社も多い。総資産が増えるが、金融機関からの借り入れも増え、数億の負債になることもある。通常、中小企業のオーナーは、この借り入れの個人保証と同時に、自宅等を担保に入れることが多い。

 中小企業の役員・社員が社長になるためには、
@数億の株価を買い取れる現金
A個人保証をする根性と金融機関の信用
B担保を提供するための個人資産の保有
C経営者としての力量
この四つが揃うことが条件だ。

 よく、セミナーで「この四つの条件が揃った社員であれば、既に独立していますよ。」と言うと皆様方もなるほどとうなずいてくれます。

 それができる人が真の経営者だと思う。

 そこで、第四の方法として、中小企業の株を第三者の会社に譲渡し、資産も負債も引き継いで頂くというのが「中小企業の後継者問題を解決する方法」として年々増加している。

 「売り手のメリット」は
@後継者問題の解決になる
A社員がより大きな会社の関連会社になり、生活が安定する
Bオーナーも創業者利益を取り、借金から解放される(私はこれをミニ上場と呼ぶ)。
 「買い手のメリット」は
@新規事業への進出
A売上・利益の増加
B新得意先の確保、新技術の取得、人材確保等多く挙げられる。

 M&Aで私どもが最も重視するのは「シナジ―効果(相乗効果)」である。売り手の中小企業は、技術力はあるが販売力や資金が無い。買い手は販売力や資金力のある企業が多いので、売上が数年後に2、3倍になる例も珍しくない。

 M&Aは昔、「乗っ取り」などと誤解された時代もあったが、売手企業は存続し、買い手企業は発展し、社員は雇用が守られ生活も安定する。これらが成り立ち、全員がWIN×WINになるのが正しいM&Aだと思って20年間やってきた。

 今、日本経済は大変な時代になっているが、大手企業は「集約化」と「グローバル化」で、この難局を乗り越えようとしてい る。

 中小企業も安易に後継社を親族に継がせるのではなく、良く出来る経営者のもと、一体になり「集約化」「グローバル化」の波に乗り遅れることなく、この難局を乗り切り、「企業の存続と発展」を目指して欲しいと切に願っている。



次号は、イー・アクセス(株)/イー・モバイル(株)代表取締役会長 千本倖生氏にお願いします。
リレーエッセイ 「中小企業の存続と発展の方法とは」  (リーチレター 2010年10月号)  株式会社日本M&Aセンター 代表取締役会長  分林 保弘

 info@chosakai.or.jp
 http://www.chosakai.or.jp/

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