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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2011. 10.  RIETI  LETTER
人生は自分の想像を遥かに超えるもの顔画像と経歴



料理人  幸村 純

 料理の世界に入るため京都へ。当時の古き都では東京生まれの私にとり、料理を修業する前に普段の生活から全く違う世界を知ることになりました。京都御所の西に店はあり、何十年もその土地に住む人達に囲まれる人生が始まったのです。今その頃を振り返ると、当時十五歳の私はこの町に大切にしている物を教わっていたような気がします。祭事、風習、しきたりなど学びました。それは板前になる前に京都人になる事だった気がします。十五年余り見習い奉公の後、店を変わり新たに挑む人生へ。しかし、新たな場も見習う事からの始まりでした。京料理を作り上げてゆくまでにその店が目指すもの、大事にしている事、目に見えぬ『らしさ』を見つけるのは大変でした。どの店もオリジナルを求めている事、大切にしているものは何か、見せ掛けでは通用しない京の厳しさ、その上でお客様を魅了する京料理。物を作り上げていく間に、何度も問答を繰り返しながら『らしさ』を創る。真似事から始まるものだが、真似をしない。真似る方が楽かもしれないが、色々な制約を自分に課す事で知恵を搾り出す力を身につけてこられたと思います。料理を作る上で今それ程新しい素材が出てくる訳ではなく、逆に失われてゆく物の方が増えています。その中で伝統あるものを残し新しい形に挑む、挑み方を間違えていると残る形『料理』にならないと教えて頂きました。様々な分野でほんまもんを見、築き、残してきた都。ほんまもんの定義はないのかもしれません。しかし、料理を作り上げていく際に終わりなく問答を繰り返し続ける努力、行動がほんまもんの路へ繋がるものと考えます。このような事を学びながら料理と向き合う事で、自分の人生の捉え方も変わったように思います。

RIETI LETTER 表紙画像

 東京に出てきて12年。目まぐるしく変わる世の中で一つのものを継続して行く難しさに向かい合う今ですが、十五歳で京都の土を踏み、見習いを始めた時の自分からは想像を遥かに超えた人生が在りました。店を開くにあたり導いて頂いた方、継続して行く中で厳しい山岳路を標し、チャンスを与えて頂いた方々に出会えました。また、今年の三月にはメルボルンにて料理をする機会を与えて頂き、海外で日本料理に携わる人々との出会いが、改めて自分自身のあり方を考える時間にもなりました。今現在、料理に勤しむ若者達に「本当に人生はわからない、だから真剣に向き合えば必ず夢に対する導きに出会え、人生のサーチライトが見える」と信じて欲しいのです。修行の仕方に間違いがなければ、光に向かって進めるでしょう。人生に近道は無い事を知り、一時一時を大切に過して欲しいと思います。

 それは私自身が問われているものと改めて思い起こすものです。夢を多く見、我が足りている事も知りえ、我が心を月に写しながら重ね進んで行きたいと願います。



次号は、、高見(株)代表取締役の高見重光氏にお願いします。
リレーエッセイ 「人生は自分の想像を遥かに超えるもの」  (リーチレター 2011年10月号)  料理人  幸村 純

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