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リレーエッセイご執筆者に次号のご執筆者をご紹介頂きます2012. 9.  RIETI  LETTER
ピアノは自分を写す“鏡”。顔画像と経歴



ジャズピアニスト・作曲家 国府 弘子

 アルバムデビューから25年。相も変わらず「ダメだ、修業が足りない」とクヤシ涙にくれたり、「新しい扉が開いた!」とピアノとの蜜月に感激したりの一喜一憂、かくも新鮮な日々の継続に感謝です。自作の曲、あるいはさまざまな曲を自分流に“料理≠オてはソロやバンド、時にはオーケストラとともに奏でる・・・CD制作よりテレビ出演より、一番の喜びはとにかくライブ。

 子供の頃は身体が弱く、あの内気で人見知りな時代を思えば、今こんなにも人前に自分をさらけ出し、しかも旅の多いアクティブな生活、本当にびっくりです。まあ体力は大人になっても不足気味なのですが、代わりに心から湧き出る「ワクワク感」や「キュン」を燃料に、自分の想いをピアノにのせて伝える、ということを続けています。特に「ジャズ」という音楽と出会ってから、その自由さとスリル、高揚感にシビれ、同時に、取り繕おうとしてもその時の自分が否応なくさらけ出されてしまう“恐さ≠烽スっぷりと味わうように・・・ジャズってのは、全く何と表現したらいいものやら、無限の魅力とオソロシさに満ちた、とにかく面白い音楽なのです。読者の中にはジャズ演奏が趣味、という粋なかたもいるかもしれません。もちろん聴くだけだって充分素敵、、しかし正直言えば、実際に音を出す喜びにはとてもかなうものではありません。これはもう、ヘタだろうと、とにかく“ズージャのイキフンで=iジャズの雰囲気で)バンド仲間と音を出してみればわかる。自分開放
RIETI LETTER 表紙画像 的快感におそわれ深みにハマっていくのは必至。過去の天才たちのプレイを真似するところから始まるジャズ入門ですが、私も初心者時代エヴァンスからピーターソン、レッド・ガーランド、と寝てもさめても“耳コピー=Bカセットテープがワカメみたいにビロビロになったのが懐かしいです。入門時のコツは、とにかく「名人を聴いて真似る」こと。そして応用実践。人とセッションするようになると、ここでも重要なのは「相手の音を聴く」こと。自分が何をやるかよりも、とにかく「聴け、聴け、聴け」なのです。相手の出す音を聴け。自分の音色を聴け。そして仲間と音で会話し、音色を磨く事で道は開けていく。ガンバりすぎは独りよがりに通じ、我の強いヒトは仲間の音を聴かないので会話が成立しない。「ちゃんとやろう」なんてカッコつけると力んじゃって失敗の素。で、時々「あ、さっきの自分、無心に音楽で会話できていた」と扉が一枚スッと開く瞬間がある。そういう時の自分は、なぜか日常でも無欲、平常心。本当にピアノは自分を写す鏡のようです。自分とヒトとの関係はもちろん、とりわけその時の「自分自身との関係」がわかる。客観的に見つめ、拒否せず、許し、いい瞬間を引き出していくために、私はこれからもピアノと楽しい苦労を続けて行こうと思います。



次号は、落語家の柳家花緑氏にお願いします。
リレーエッセイ 「ピアノは自分を写す“鏡”。」  (リーチレター 2012年9月号)  ジャズピアニスト・作曲家 国府 弘子

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